魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 それだけ言うと、スレイバート様は護衛の騎士を数名置いて若干慌ただしそうにいずこかへと去ってしまった。
 エルマ様はニマニマした顔でそれを見送ると、こちらを興味津々の表情で覗き込んでくる。私は途端に改まって頭をぺこぺこと下げた。

「は、初めまして。シルウィー・ハクスリンゲンと申します。い、一応、彼の婚約者を務めさせていただいております」
「ま、それを言うならあたくしも胸を張って前ボースウィン公爵夫人だなんて言えないわね。エルマよ、よろしく。……しっかし、あのスレイバートが結婚ねぇ、それもあなたみたいな大人しそうな子と。怪我の功名とはこのことかしら。中々面白そうなことになってるんじゃないの」
「は、はぁ……」

 楽し気な表情を浮かべると、エルマ様は早速次の行動に移り出した。

「テレサがいるのなら、ある程度怪我人の治療はしてあげられそうね。それに仕入れてきた食料なんかも配ってあげないといけないし。あなた、手伝ってくれる?」
「も、もちろんです!」
「よいお返事。貴族が裕福に暮らせてるのも領民が安心して毎日を送れていてこそだからね。それじゃあ片っ端から敷地内を巡っていきましょ!」
「「はいっ!」」
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