魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 その悲しそうな様子に思わず黙り込んでしまいそうになるが……テレサがお母さんのことを大好きなのはつい最近直接聞いたばかりだ。それだけでもわかっていてほしいと口を動かす。

「それはきっと、側にいてくれた方がよかったんでしょうけど……テレサはスレイバート様に止められても、こんな危険なところに心配で駆けつけてくるくらい、あなたのことが大好きですよ。……理由があったことも理解していましたし、だからテレサも、エルマ様には自分を生んでくれた母親として胸を張っていて欲しいんじゃないかって、そう思います……!」
「……あなた、いい子ね。ありがとう……。あの子のことをちゃんと、分かろうとしてくれて」

 必死にテレサの気持ちを代弁したつもりでいた私を見て、エルマ様は幸い、こちらに柔らかい笑みを浮かべてくれた。でも、やっぱりその横顔には疲れのようなものが滲み出ていて、この人にも長らく抱えた苦しい思いがあるのだと確信した。

 ひとりの女性でもあり、母でもある彼女の感情。娘との関わりでは、決して解放されなかった重荷。私はそれがなんなのかをどうしても知りたくなって……嫌われたり叱られても仕方ない不躾なことを、気付けばほとんど初対面の彼女に申し出ていた。

「あの、お願いがあるんです……。どうしてボースウィン領に居られなかったのか、私にだけ教えてもらえないでしょうか? テレサには絶対言いませんから……」
「どうして、そんなことを……?」
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