魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 テレサが言うには、その魔力は時には両方、時には兄弟で別れるといった形で受け継がれたりしたものの……ボースウィン家の係累達は皆貴重なその魔力を領民のために生かそうと、例外なく研鑽に勤しんだらしい。

 そしてスレイバート様もまたそれは同じだった。父親が両属性を扱えたことから彼もと期待されたが、残念ながらそうはならず、彼は氷の魔力だけを授かったらしい。
 私が兄の分の聖属性の魔力を奪ってしまったのかもしれないと、テレサは自嘲気味に笑うのだった。

「でも、お兄様はそんなこと気にせず、父の指導の下本当に努力していました。人当たりは決してよくはないですけど、頑張り屋で、優しくて、自慢の兄なんです」

 テレサの困ったような笑みからは兄への信頼が伝わってくる。

 斜に構えたところもあり、気に入らない人間には強く当たったりもするけれど、毎日朝から晩まで剣を振り、魔法の修業や公家の跡継ぎとしての勉強を欠かさない兄の姿をテレサは頼もしく思っていたという。

『ちっ。親父がちょっとデカい魔物を倒したからって、デキの悪い俺なんかに期待を押し付けられちゃたまんないぜ』

 スレイバート様は、よくそんな風にぼやいていたとか。偉大な人物を父親に持ったため、常に比較される立場の彼は必死だったようだ。だが、その努力の日々を城内の人々もちゃんと見守っていて、順調に次期公爵として育ってゆく彼の姿に期待していたという。
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