魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 ラルフさんは公爵家の出なんだし、敬称で呼ばれたら私の方が恐縮してしまう。それを伝えようとしたら、スレイバート様がそこで私の口をさっと塞いで、そうラルフさんに言い放った。

「今回てめぇはあれだけこいつに迷惑をかけた上、温情処置で解放して貰ってんだ。ここは大聖女シルウィー猊下(げいか)と敬意を込めてへりくだるところだろ。んで俺のこともボースウィン公爵閣下と呼び、崇め奉りやがれ。それとも、その悪そうな頭では把握できなかったか?」
「ぐっ……てめえ」
「わあぁ……! 別に私はそんな大袈裟な呼び方されなくていいですから!」

 慌てて席を立ち睨み合うふたりの間に身体を滑り込ませようとする私。

 そしてぐうの根も出ないラルフさんは、スレイバート様を睨み付け唸るように言った。

「ぐっ……わーったよ。あんたらの意見の間を取って、シルウィー様と呼ばせてもらおう」

 年も身分も上の男性にそんな風に呼ばれるのは違和感があるが、この場ではこれ以上口を挟めそうにない。渋々納得した私の前で、しかし、彼は抵抗するようにスレイバート様に指を突き付けた。
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