魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 一触即発のふたりの緩衝材になってなんとか彼らの興味を逸らすと、育ち盛りの若者なので食欲には抗えず、なんとかふたりは席に落ち着いてくれた。

 そこからは、満腹になってしまえば喧嘩する気もなくなるはずだと、ふたりの食事を切らさないように、とにかくかいがいしく世話を焼く。

 気を利かせた店主さんもお代わりをどんどん持って来てくれ、左右から時々思い出したようにお互いを罵るふたりに挟まれて、ふらふらになりながら私は冷や汗ものの食事会をなんとか切り抜けた。

「ふい~、食った食った! 後はゆっくり休んで、リュドベルク城の攻略に備えっか!」
「うるせえ、仕切んなっつってんだろ!」

 残念なことに、とても美味しかった食事のはずが、あまりなにをどう食べたのかをよく覚えていない。

 でも……ここからだ。
 ラルフさんはきっと無理をしてでも場を明るく盛り上げて、自らをも奮い立たせようとしていたのだと思う。
 そしてスレイバート様も、なんだかんだ本気で彼を置き去りにするつもりはないようだ。この三人で、必ずカヤさんを救い出そう。
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