魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「……カヤさんを助け出せたら、ラルフさんはどうするんですか?」

 ……目の前の希望がきっと彼女を救う力になる。
 具体的なイメージを膨らませようと尋ねた言葉に、ラルフさんはきょとんとした後、口元を笑顔にする。

「そうだな。まずは……兄貴に許してもらうまで頭を下げるよ。んで俺も、リュドベルク領の復興に力を尽くしながら、カヤが元気になるまで側で支える。それが終わったら、あいつと一緒に色んな場所を回りてえな……。そういやさ、あいつボースウィン領にも行ってみたいって言ってたんだ。あんたらのところでは、雪ってのが降るんだろ? 真っ白な雪に足跡を付けて、どんな感触がするのか……自分で確かめてみたいんだとさ」
「それは楽しみです。スレイバート様もカヤさんが来たら、歓迎してくれますよね」
「ん、ああ……」

 私たちの話を黙って聞いていたスレイバート様は、不満そうな顔を崩さないまま、でも……ちょっとだけ誇らしそうに言った。

「まあ、隣同士の領地でいがみ合ってても仕方ねえしな。領民達を安心させるために、友好の使節ってことでお前らをこっちの城に招待してやってもいいぜ。ただし土産はちゃんと持って来いよな」

 そんな意地っ張りの言葉を聞いて、私とラルフさんは小さく吹き出してしまう。ラルフさんの手元が狂い馬車が揺れると、スレイバート様は苦虫を嚙み潰したようにそっぽを向いて、彼を追い払うようしっしっと手を振った。
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