魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「ただし赤髪、お前は由緒正しきボースウィンの城の中には絶対入れてやらねえ。妹がうちの城の壮大さに目を輝かしてる間、外の馬小屋で人参でも齧ってひもじく過ごしてろ」
「か~っ……ちったあ見直そうかと思ったのに、やっぱ氷魔法ヤローはいけすかねーぜ。おいシルウィー様よぉ、こんなやつとの結婚とか、ぜってー考え直したほうがいいぞ」
「余計なお世話だっつの。俺の優しさは有限なんだ。てめえみたいなのに注ぐ部分があったら、全部こいつに突っ込むんだよ」

 ラルフさんが文句を言うと、スレイバート様は彼から遠ざけるようにして私を抱き寄せた。たちまちまたふたりのいがみ合いが始まってしまう。

 こんな調子じゃ、彼らが友好的に笑い合える日が来るには、どれだけの年月がかかることやら。
 でも、そんな彼らの敵対行為も長くは続かない。

「っと……そろそろかと思ってたが、お出ましになりやがった」

 ラルフさんが、馬たちの速度を緩めながら獰猛な笑みを浮かべ、スレイバート様の瞳が温度を下げる。魔物の群れの出現。

「シルウィー、お前はそのまま瘴気の除去を続けてろ。やつらは俺がやる。赤髪はちゃんと馬車の速度を維持してろよ。下手うちやがったら蹴り落としてやるから覚悟しとけ」
「おーこわ。そんじゃ冷血公爵様のお手並み拝見と行きますかね。――突っ込むぜっ!」
< 620 / 1,187 >

この作品をシェア

pagetop