魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「くっそおぉっ!」
「ちょっと待ってろ」

 畳み掛けるように振り下ろされた巨大蔦がラルフさんの頭上に迫った時、スレイバート様は私をそっと下に降ろしながら、片手を前に向けていた。

(わ……!)

 しゃんと――背中側から、急に鋭い冷気が走り抜けていったように感じ、思わず目をつぶる――。

 そして髪を押さえていた私がおそるおそる視線を戻すと、そこでは……一面に銀世界が広がっていた。

「ぎぁぁぁぁぁっ、寒いぃぃぃぃっ!」

 ラルフさんのあげるそんな情けない奇声が響き、上空で固まっていた数本の蔦が、いくつか重さに耐えきれなかったかバキバキと砕けていく。

「さあ、とっとと城内に乗り込むぞ」
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