魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「なるべく、私の側から離れないようにしてくださいね。ここの空気はあまり身体によくないと思いますから」
「ありがてえ。ここまで濃い瘴気になると、さすがに魔法士の俺らにとっても毒だぜ……っておい、なにすんだ! げほっ、ごほっ」
「どさくさに紛れてシルウィーに近づこうとすんじゃねえ」
「どうしろってんだよ……」

 スレイバート様に身体を突き飛ばされ、一瞬範囲の外に出された彼が大きく咳き込む。さっきからの酷い扱いに苦笑いした私はわずかに吸収の区域を広げると、げんなり顔のラルフさんが、背中を気にしながらよたよたと私たちを先導しだした。

「ったく、どこの暴君だあんたは……。って、こんなことしてる場合じゃねえな、カヤの部屋はこっちだ」
「シルウィー、無理してないだろうな」
「え? あ、もちろんです! もし危なそうになったら、すぐに伝えますから」

 素っ気無いが、体調を気遣ってくれたのだと気付き、私は小さな笑みを作る。スレイバート様はそれを見てこくりと頷くと、すぐに顔をまた前に向けたが、その表情はやや固い。

(多分、私たちの存在が重荷になってるんだ……)
< 628 / 1,187 >

この作品をシェア

pagetop