魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 スレイバート様がその姿を観察する間にも、魔物たちは私たちを取り囲もうとしていた。
 触手めいた両腕を伸び縮みさせて突き刺したり、絡め取ろうとしてくる。

「突っ立っててもしょうがねえ! こいつらを倒しながら先に進もうぜ!」
「ならさっさと行け。援護はしてやるが、邪魔な場所に立ったらお前ごと穴だらけにするからな」
「……あんたにだけは背中を任せたくなかったぜ」

 一瞬青ざめながらも、こっちだ――と威勢のいい声を張り上げたラルフさんが魔物に躍りかかった。
 両手に宿した魔法の火炎と格闘は見事なもので、たちまち蔓人形たちは蹴散らされていく。その後ろから、スレイバート様も氷の礫を生み出すと、近付こうとしてくる周りの相手共を撃ち抜き、氷漬けにしていった。まだ先は長く、なるべく無駄な魔力の消費は避けるつもりでいるのだろう。

「カヤの部屋は、城の最上階の角側だ! 送れずついて来いよ!」

 城内は静寂に満ち、それは生存者がもう誰もいないことを示している。物音がよく反響するがらんどうの空間が、人の住む場所でないと伝えてくるようで不安を煽るが、それでも前を走るラルフさんは懸命に希望を見失うまいと足を動かしていた。

 門から回廊へ突入すると、長い絨毯敷きの床を踏みしめ、四方八方から出現する魔物達を倒しつつ奥にある階段へ。
< 630 / 1,187 >

この作品をシェア

pagetop