魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~


「――カヤぁぁぁぁぁっ!」

 兄の悲痛な雄たけびを聞いても微動だにしないどころか――。
 その少女の姿は、もはや生きているとは思えない、そんな有様だった。

 年頃の女の子らしい趣味を反映した、可愛らしい人形や小物類が置かれた室内の、大きな窓下。
 花瓶と枯れた花々が置かれた小さなサイドテーブルの隣に屹立していたのは……ベッドではなく、一本の大樹。

 そして、その幹にまるで精密に象られたような少女の彫像に向けてラルフさんは駆け出し、足元に縋りついた。

「どうして……こんなことになっちまったんだ。……なあ、カヤ」

 ラルフさんは絶望の表情で涙ぐみながら、両手を吊り上げられた形で大樹の表面に浮かび上がる少女に、顔を擦り付ける。その肌もすべて紫色に染まっていて、本当にかつて息をしていた人間だとは思えない。

 とにかく私も駆け寄り、彼女の状態を確かめた。
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