魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 近くからだと、より鮮明にその大樹の様子を眺めることができる。部屋の全体には、その根と枝が張り巡らされるようにして床や天井を突き破り、方々へ伸びている。それらの質感は、この城中に蔓延る蔦人間や、城を覆う巨大な蔦籠と酷似していて……。

 表面に触れていると、時折どくりと脈打つような振動が、肌に伝わってきた。

(もしかして……! 魔力を……吸いあげられているの!?)

 私はぞっとする。おそらく彼女は呪いによってその身を変化させられ、この城を中心とした、領内全体に瘴気を振りまくための製造装置として、今も生きながら利用されているのだ……。

「なんて…………ことを」
「うう、カヤ……。頼む。目を開けてくれよ……」

 筆舌に尽くしがたい残酷なやり口に、私は背筋が燃え上がるような怒りを覚えた。

(……とにかく、今はできることを)

 ラルフさんの啜り泣きが延々と反響する中、私が呪いの吸収を試そうと大木の表面、少女の腹部の位置に手を触れようとした時――。
< 640 / 1,187 >

この作品をシェア

pagetop