魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 そして彼は、苦渋の表情でカヤさんを見つめた後、喉をぐっと鳴らし……。

「――頼むっ!」

 四つん這いとなって女性へと懇願した。

「それ以外なら、何でもする。死ねと言われれば従うし、あんたの手先にだってなってやる……だから、この人のことは見逃してやってくれ。そして……カヤの呪いを、解いてやってくれ! 頼むっ!」

 妹をこんな状態に追いやった(かたき)を前にしながら、ラルフさんは己の命すら投げ出すように、無防備な背中をさらけ出している。

 だが、そんな悲しみを誘う姿を見てなお女性が下したのは……至極冷酷な決定だった。

「あらあら、ずいぶんと欲張りだこと……。でもダメ。その女を殺すか妹を見捨てるか、ふたつにひとつよ。なんにも難しい判断じゃないでしょう? だってたった数日前、あなたはそうするつもりで彼女の前に姿を現したのだから。今こそ、情に流されず、本当に大切なものを選び取るべき時なのではなくて?」
「…………」
< 645 / 1,187 >

この作品をシェア

pagetop