魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 闇に溶け込むような刃のはずが、妙にぬめった光を放つのは、刀身に毒のような液体が塗られているせいか。

 信じられないが……仕方ないのか、というふたつの思いが胸の中で交錯し……私はそれを待ち受けることしかできない。

 それでも反射が両目を勝手に閉じさせ、尖った刃先が埋め込まれる強烈な痛みに備えようと、身体が尻餅をつき、ぎゅっと縮こまった時だった。

「……ぎゃっ!」

 短くくぐもった悲鳴と共に、カラァンと、なにかが壁にぶつかる甲高い音――。

(えっ……!? どうなった、の……?)

 おそるおそる目を開いた私が身体を確かめると……血の一滴どころか、ドレスの生地すら破けていない。

 のろのろと顔を上げて一番に目に入ったのは、振り上げていた片手を投擲の姿勢で女性に伸ばし、私を庇うように背を向けたラルフさんの姿だった。
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