魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「ごめんなさい……この状態のカヤさんから呪いを取り除くというのが可能なのかどうか、私には分かりません。……でも、全力を尽くします。あなたもそこで祈っていてくれますか?」
「当たり前だ……。たとえ、うまくいかなくても俺はもう自暴自棄な真似はしねえ。こいつが見守ってくれていると信じて、この先も……兄貴としてふさわしいように、この領地のやつらを助けていく。だから……力を尽くしてくれ、頼む」

 先程までとは打って変わった、芯のある真っ赤な瞳を私に向けると、彼は静かに跪き目を閉じた。私はそれを見届けた後、カヤさんの身体が浮き出た巨木に身体を添えるようにして、そっと額を合わせた。

 魔法がイメージによって成り立つのなら……いつもの祈りよりも、もっと深く。私の意識が闇よりも暗い想念の底へ落ち込んで行く――。

(……どうして!?)

 だが、いくら祈っても前回のように、呪いが私の身体に取り込まれてくる感触がしない。焦りながら私はその理由を必死に探す。
 そしてなんとなく感じた……。

 今日初めてその顔を見ただけの私と彼女には、なんの心の繋がりも存在しない。彼女自身がもし、自分の心に誰かが触れられることを拒んでしまっているならば――私の祈りは、彼女のもとへ届かないのかもしれない。
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