魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
(嫌よ! 私疲れちゃった。外の世界に戻ったって……また、ずっと苦しい思いを抱えて、頑張らなくちゃいけないだけでしょ。それなら……なにもないここで、ずっと静かに眠っていたい。辛いのは、もう懲り懲り。だから、出て行って!)
「うっ……!」

 ばちんと弾き飛ばされるような痛みを受け、私は一瞬手を離す。しかし、またすぐにもう一度、彼女を説得し始めた。

(あなたが辛い思いをしてきたのは、ちょっとだけ見せてもらったわ。大変だったわよね……。でも、あなたが起きてくれないと……。今この時も、この領地のたくさんの人たちが、家族や故郷を失くして、途方に暮れているの! だからお願い、こちらの世界に戻って来て!)

 すごく酷なことを頼んでいるのが分かっていて、それでも私は彼女に縋るしかない。なにせ、私では彼女の病気は治してあげられない。無理をして引き戻したところで、その苦痛を変わってあげることも、和らげてあげることできないのだから。そして当然、彼女はその願いを拒否する。

(そんなの知らないもん……。どうせまた戻ったって動けないまま時間が過ぎて、苦しむだけ苦しんで死んでくだけだよ。弱い人間なんて……生まれてこない方が幸せなのかもね。辛いことばっかりで、最後にはこうしてひとりぼっちで消えちゃうんだから。ねえ……もういいでしょ、お姉ちゃん。私にこれ以上無理をさせないでっ!)
(……あうっ!)
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