魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 さっきよりも強い力で弾き飛ばされ、私は思わずその場に倒れ込んだ。手の皮は破け、指の隙間から血が腕まで伝う。背中にも棘が刺さり、もはや痛い以外の感覚すらない……。

 でも、もしかしたら――この痛みも、彼女が苦しんできた毎日から切り取ったほんの一部に過ぎないのかもしれないと思うと……。ここで終わらせてはいけないと、私は彼女にまた問いかけた。

(でも……いるんだよ! あなたの帰りを懸命に信じてくれている人が! その人は、あなたを助けることだけ願って、危険も厭わずにこんなところまで来たの! だからどうか……彼の――ラルフさんのところに、もう一度だけ戻ってあげて!)
(――うるさいなあ!)

 怒りの思念が直接叩きつけられ、私はまた跳ね除けられた。痛みの総量が限界を越えて、立ちあがることも覚束ない。頭の中をカヤさんの怒りの言葉がぐるぐると回る。

(そんなわけない……! お兄ちゃんは、私が最後に倒れた後、ずっとこうなるまで助けに来てくれなかったじゃない! きっとお荷物な私のことが嫌いになって、逃げ出しちゃったんだ! それでもいい……もうお兄ちゃんの足を引っ張る私なんて要らないでしょ! だから、余計な話を聞かせないで、ここから出て行って!)
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