魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 もとの世界での苦しみだけじゃなく……彼女自身も、この呪いが大勢の人々と大好きなお兄さんを苦しめていることを知り、どうしたらいいのか分からなくなっているのだと思う。

 城を囲っていたあの巨大な蔦の檻は、もう誰も自分に近づかないでという願いを反映するとともに、こんな無力な自分など、どうせどこにも行けないのだという、彼女自身を縛る諦めの鎖だったのかもしれなかった。

(きっと、私じゃダメなんだ)

 せっかくカヤさんの心と直接触れ合うことができたのに……私の言葉では肝心なことが永遠に伝えられない。そこには一番大切な、彼女への想いが含まれていないから。

 途方に暮れた私は、その場に足を崩したまま、頭上にどこまでも続く暗闇を見上げる。
 そうしていると段々、今まで手を伸ばせば触れられていた、彼女との心の距離が遠ざかってゆくようで、焦りが心を支配しかけた時――。

(このままじゃ――――っ?)

 ――ぱちっ。
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