魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 カヤさんはどうなった――それを確かめようとして、愕然とする。

「そんな……」

 未だ紫色の大樹は、そのままそこにあった。埋め込まれた、彼女の身体も――。

「呪いは、全部取り込んだはずなのに……」

 身体をもとに戻すための魔力が、残っていなかったのか……。

 魂が抜けてしまったかのような気持ちになり、その場から動けなくなった私の隣で、ぱちりと、ラルフさんが目を開けた。
 でも彼は、表情を失くした私の肩に手を置くと大丈夫だというようににっと笑い、目の前の少女の元に進み出ると、大きく両手を広げた。

「カヤ……おかえり」

 ――ぴっと、大樹の表面に亀裂が入る。
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