魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 それは……だんだんと音もなく広がってゆくと、はらはらと薄い破片を床にこぼし……。

 やがて少女の重みを支え切れなくなったかのように、儚い音を立てて崩れていった。

「っと……。はは、大きくなったよな、お前も」

 そこから現れたカヤさんの身体をラルフさんはしっかりと受け止めると、愛しそうに抱き締める。

「ラルフお兄、ちゃん……?」

 白い瞼が震えるように開き、目の前の顔を見つめた。すると……一滴、また一滴と、透明な雫がぐしっと歪んだ精悍なラルフさんの頬を滑っていく。

「もう二度と……辛い思いはさせねえからな」
「うん……」

 細い腕が震えながら持ち上がり、兄の背中に届くと同時に……。
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