魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 ざあっと、カヤさんを閉じ込めていた巨木は枯れ、粉々になって崩れ落ちてしまった。

(……解けたん、だよね。呪いは)

 私は、お腹の中に溜め込んでいた息を大きく吐き出すと、座り込んだまましばし、目を閉じる。

 今回、確実に私の力だけでは、カヤさんを助けることはできなかった。

 おそらく……この地を守っていた精霊の支援と、決め手となったラルフさんの強い想いがなければ、呪いを彼女から切り離すことは叶わなかった。私も無力感を抱えたままこちらに戻るだけになっただろう。

 今も後ろでは、互いをなによりも大切な宝物として慈しむふたりの姿がある。
 それは語らずとも教えてくれている気がする。家族、友人、恋人……そんな肩書も実はどうだってよくて、一緒に生きていきたい人――それを決めるのは私たちの心なのだ。

 絶え間なく、私たちを取り囲んでいた瘴気が薄れていくのを肌で感じ……耳が後ろから、ゆっくりと近づいてくる足音を聞きつけた。

「終わったみてーだな」
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