魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 あの妖しい――血色の輝きを私はどこかで……。

(ボースウィン領に来てから? ううん……違う。それよりもっと遡った、すべてが始まった時に……)

『――無様だこと……』
「あ…………!」

 侮蔑の一言とともに、赤い三角形のピアスが、脳内で揺れた。

(ヴェロニカ……)

 その部分が、ようやく王都を発つ前のか細い記憶の糸と繋がり、私はぞっとする。
 いけない――そんなことがあってはならないはずなのだ……!

 彼女は、この帝国を守護する精霊教会の頂点で……唯一の巫女。すべての国民の信仰を集め、癒しを与えるべき存在。
 それがもし、黒ローブの女性と――この国に災厄を招いていた人物と同じなのだとしたら……。

 ぎゅっと胸を抑え、私はその嫌な想像を振り切ろうとする。しかし、そんなはずはないと思うほど、あの時の彼女の口調や仕草が、皇太子に侍るヴェロニカのものと酷似していたような気がして……。
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