魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 私はその中に一等豪華な四頭立ての馬車を見つけると、蝋燭を吹き消し、急ぎ階段を駆け降りていく。

 さすがに城内で走るわけにもいかず、逸る気持ちを抑えて可能な限りの速足で踵を動かす。各方面に伸びる十字型の回廊を通過し、南側の扉を抜けると、もう外では停車場に留まった立派な馬車から、背の高い人影が降りて来るところだった。

「スレイバート様、お帰りなさい!」

 私が名前を呼びながら駆け寄ると、涼やかな装いの銀髪の貴公子が、とっと軽い足取りで地面に着地する。彼は私を見ると、目元を緩め、ふっと微笑みかけた。

「早かったな。もしかして俺らが戻ってこないか、門の方を眺めて待ってたのか?」
「はい、お話したいことがたくさんあって……」
「そうか……いい心がけだ」

 私が素直にそう言うと、スレイバート様は笑みを深くして、私の頭をぽんぽん叩く。でもその後にすぐテレサが降りて来たので、彼は表情をいつも通りのものに切り替えると、妹に手を差し伸べた。

(あら、幸運でしたわねお兄様。久々のお姉様のお出迎えは、心に沁みたのでは?)
(うるせー。んなもんで喜んでたら、結婚したら身が持たねーだろ。ほら、にやついてねーでさっさと降りろ)
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