魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 テレサの押し込めていた泣き声が、大きく響き渡る。(すが)るように泣く彼女の身体を抱え、私が綺麗な銀の髪を梳くようにして撫でていると、足音が近づいてくる。

 そしてノックもなく、バタンと部屋が開けられた。

「人様の妹を泣かしてんじゃねぇよ」
「あっ、これは……」

 テレサを抱きしめる格好になっていた私は動揺したけど、その様子を見て、スレイバート様は少しだけ目元を和らげ、こちらに近づいて来た。

「お兄様、違うんです。シルウィーお姉様は、私を……慰めてくれていて」
「……そうかよ。ならいい」

 今日は彼は、先日と違って白銀の仮面と手袋を身に着けている。そうしていると、呪いの痕が隠れ、至って健常に見える。これから、どこかにでも出かけるのだろうか?

 目をぐしぐしとこすり自分を見上げたテレサにスレイバート様は微笑みを向けると、優しく頭を撫で、その顔がこちらに向いた。
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