魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「あっ……お兄ちゃ~ん、お疲れ様~!」
「おう、今日もよく働いてきたぜ。おらおら、ここからは兄妹水入らずの時間だ。用のないやつは散った散った!」
「そいつぁひでーやラルフ坊ちゃん。俺らの一日の唯一の楽しみってか、潤いを奪わないでくだせえよぉ」
「そうだそうだ、横暴だ! 兄貴だからってカヤお嬢様を独占していいって法律はないはずですよ。どうせいつかはお嬢様もご結婚なさって手の届かねえところに行っちまうんでしょ? いっそ今のうちに、妹離れしておいたらどうなんですか!」
「うるっせえ! 口惜しかったら腕ずくでオレを黙らせられるような男になってみやがれてんだ! それができねえやつがこいつに近づくなんざ、兄として許さん!」

 癒しのひと時を邪魔された作業者たちからのブーイングを拳にめらつかせた炎で黙らせてやると、オレはカヤの足元にしゃがみこみ、目線を合わせる。

「ってことだ。へへっ……早く俺をぶっ倒すくらい強くて、金持ちで格好よくて懸命で誠実な、そんな将来性のある男が現れて欲しいもんだよなぁ」
「もー、お兄ちゃんったら求めすぎだよ。私、そんなことじゃ気になる人ができても、教えてあげることもできないじゃない」

 まだ見ぬ妹の結婚相手に無謀な期待をかけている、バカな兄貴に呆れたように笑うと、カヤは震える手をこちらに持ち上げた。
 しかしそれは途中で、膝の上にぽとりと落ちてしまう。
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