魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 ――残念ながら、事件の後カヤの身体が元通りに動くことはなかった。

 幼い頃に逆戻りしたかのように、今も四肢にはほとんど力が入っていない。
 そりゃ、あんな生きているかどうかも分からない状態だったのが、生還できただけでも運がよかったと、分かってはいる。

 それでも――こうしてこいつが自由に動けないところを見ると、胸に苦いものが込み上げてくる。
 俺にもし、呪いなんかを吹き飛ばせちまえる力があったら……もっと早くにシルウィー様に頼っていれば――……。

「えい。そんな顔しないでよ」
「いて」

 身体の力を抜いて倒れ込んできた妹の頭突きが、俺の目を覚まさせる。
 慌てて抱えて椅子に戻すと、カヤは元気な笑顔を見せた。

「大丈夫だよ。また前みたいに、毎日少しずつ努力していけばいいだけなんだから」
「……そうだな」

 それが、どれほど大変なことか、こいつが一番知っている。
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