魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 きっと、遠くない内にこいつはまた元通り、自分の足で動けるようになるんだろう。一度通った道でもあるし……それに、自分のことを命の危険を冒してまで助けてくれる人が居たという事実が、カヤの心をまたひとつ強くした。

 今の妹の目標は、その瞳に以前よりもずっとくっきりと映っている。彼らに恥じないよう、これからも真っ直ぐに進んでいくだろう……。

 この調子じゃ、俺の存在だって、いつまで必要になるか分からない。その内、ひとりで歩きだせるようになって……いつか本当に俺の手から離れたら――。

(オレにも……自分の夢なんてのを追う時が来るのかもな――)

 夢なんて……本来孤児院を成立させるための道具だったオレが持ちえたものじゃなかったはずだ。
 気が付きゃ親父にそこから連れ出され、カヤに出会って以後はこいつのことを元気にするという目的に縋って生きて来たけど、それはある意味では依存に近いものだったしな。

 別にそのことを後悔してるわけじゃない。
 でも……今はあまり言わなくなったが、以前カヤはよく、申し訳なさそうな顔で謝っていた。
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