魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 もー、勝手なんだから――とカヤが不満そうに頬を膨らましている間に、兄貴は一台の馬車を部下に曳いてこさせ、親指でそいつを差した。

「ボースウィン公には世話になったからな、先方の希望とあればおいそれとは断れん。当主代理の命令だ。カヤを世話するものも乗せてあるから、ふたりで行ってこい」
「へへ、兄貴……ありが――」

 スレイバートからの手紙だっつうのは腹が立つが、この件はオレとカヤに取っちゃ願ってもない申し出だ。深く頭を下げようとしたが、兄貴はそれを拒むような厳しい顔をして遮った。

「黙れ! 私はまだ、お前を許していない。戻ってきたら、今後半年は休みなく働かせてやるから、覚悟しておけ!」

 それだけ言うと、エルハルトは背中を向けて再び馬に跨り、とっとと去って行ってしまう。
 そんなに嫌だったなら、部下にでも連絡を任せればいいのに――律儀な兄貴の態度にカヤと顔を見合わせて笑った後、オレは車椅子ごと妹を担ぎ上げた。

「うし。そんじゃ行くかカヤ、ボースウィン領へ!」
「ええと、でも……いいのかな? 私その人のことも知らないし、プレゼントも用意してないのに……」
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