魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「カヤ、これがお前の初めての冒険だな! よーし……新たな土地へ、いざ出発だ!」
「おー!」

 カヤも元気よく声を合わせ、そして車輪が回り出す。妹の目が、目くるめく未知への期待に輝き出した。

「ねえ、お兄ちゃん。ボースウィン領ってどっちの方?」
「えーとな、確かほら、北だから……うわっ!」
「きゃ、すごい風!」

 窓際に座るこいつに、外の景色を指で示してやろうと跳ね上げ式の窓を押し開くと、びゅっと――勢いよく吹き込んできたのは春風だ。
 それは、この先に広がる果てしなく遠い大地を駆け抜けてきたものに違いなく、オレたちの想像力を大きく膨らませる。

「気持ちいいね!」
「へへ……だな! ほら、もっとよく外を見せてやるよ」
「きゃー! 楽しい!」
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