魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「平和で、贅沢な悩みだよね……」

 婚約破棄から、ボースウィン領に売られてきて、紆余曲折の上スレイバート様の呪いを解くことができた。その後婚約を巡ってひと騒動ありつつも、ラルフさんに命を狙われたり、皇太子様に(さら)われかけたりする慌ただしい日々。それからテレサに魔法を教わったり、隣領の存亡の危機に立ち向かうことになったりもして……。

 最近切迫した事態が続いていたせいか……なんとなく、こうして安穏と過ごしている今に罪深さを感じてしまう。それと、先程の恋の悩みが合わさったことが、私の現在の精神状態をブルーに近づけている原因なのかも知れなかった。

『――おい、準備できたか? 入るぞ』
「……はいぃ。どうぞ~……」

 そして……本日もまた、個人的に非常に重要なひとつの出来事が待ち構えていて……。

「なにか悩んでんのか? 言ってみろ」
「ひえっ!?」

 背後からの突然の声にばっと顔を上げると、そこにはいつのまにか、スレイバート様が佇んでいた。視線を入り口に向ければドアは空いており、頭の隅にぼんやりとしたノックの残響と、生返事を返した記憶が頭に残る。
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