魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 スレイバート様の言う通り、いつでも出られるよう、すでに衣装はばっちりだ。外出の話を聞きつけたテレサがメイド達と一緒に選んでくれたのは、淡いパープルの色合いをしたロングドレス。肩にかかるふわっとしたケープ部分が、隣に立つ彼の髪と同じ白銀色で、肌露出のない落ち着いたデザインながら、凝った裾の飾り模様などについ目がいってしまう逸品だ。

 対して、スレイバート様の方は金のボタンがアクセントでお洒落なダークブルーのスーツ。そこに梳られて乱れのない銀の長髪がよく映え、印象的な紫瞳の魅力を際立たせている。なにを着てもスマートで美々しい彼のことだ、本日も歩くだけで周りの視線をかっさらっていくことだろう。油断すると、私まで観衆と同じように足を止めてしまいそうだ。

 その姿に圧倒され、必然的に比較される立場の私はおおいに縮こまって尋ねた。

「あ、あの。おかしくはないでしょうか……」

 公家のプロフェッショナルなメイドたちが見立てを間違うはずがない。
 けれど、肝心の素材たる私自身がこうなので、自信の持ちようがなく……。

 せめて許容範囲の、見苦しくない、取り繕えている――などといった返事を期待し、もじもじと内股を擦り合わせた私の耳に届いたのは……ずいぶんと素直な賞賛だった。
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