魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 ひゅんひゅん投げ落とされるハンカチやらお菓子やらは、スレイバート様が魔法の北風でまとめて氷のオブジェにしてしまい、それがまた彼女たちの歓声を呼ぶのだった。

「ほら、あそこ。子どもが見てる。手でも振ってやれよ」
「あ、本当ですね。かわいい……」

 その他にも、たくさんの街で暮らす人々との交流があった。
 ドレスが気になるのだろう……近づいて来た通りすがりの小さな女の子にそれを触らせてあげてご両親にお礼を言われたり。通りすがりの大道芸人にぱちっとウインクされたと思えば、ジャグリングしていたボールが弾け、花吹雪に変わってこちらを祝福してくれたり……。

 剃髪した頭といかつい顔で、子供好きなのに怖がられてしまう教会の神父様とか……道端で怪しげな露店を開いている、将来は都会への進出を目指している物売りのお兄さんとか。色々な印象深いユニークな人たちが街には溶け込んでいて。

 この公家にとって最も馴染み深い街では、スレイバート様の古くからの知り合いも多く……また私を見かけたことのある人もいたりして、気兼ねない交流をしているうちにだんだんと私の気持ちも解れてきた。

 その後は町長さん宅にも伺い、近々式を挙げるのだという報告をすると、彼も大変喜んでくれた。
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