魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「それは誠にめでたい。いずれルシドにも手紙を送りましょう。それまでに、向こうの状況が落ち着くならいいのですが……」
「そうだな。こちら側との交渉を相手が受け入れてくれるかどうかだが……」

 詳細は明かされなかったが、彼からも定期的に連絡が来ているらしく、お姉さんとの再会に向けて、セルベリア共和国での奮闘が続いているそうな。それに関して町長はスレイバート様と密かな会話を交わした後、「もし時間があれば、当日テレサ嬢にも街に顔見せしていただけると嬉しいですな」と伝えるなどしたたかなところを見せ、スレイバート様を苦笑いさせていた。

 そこからは再び彼のエスコートのもと、豪華な会員制のレストランでの昼食を経て、いくつかの娯楽施設やお店などに足を踏み入れることとなった。

 まず忘れてはならないのは、テレサの誕生日プレゼント。いくつかの雑貨屋で、これといったものが見つからず悩んでいると……スレイバート様はうらぶれた路地裏にある秘密のアンティークショップに連れて行ってくれた。

 異国風のお香が焚かれた薄暗い室内の中では、こちらではあまり見ない形の調度品などが目に付く。やや布面積の少ないひらひらした服の店員さんにどぎまぎしていると、スレイバート様が軽い説明をくれた。

「ここ、違法なものは扱ってねーんだけど、町長のツテでセルベリア辺りから海向こうの輸出品が流れてくんだよな。ちょっと治安が悪いからテレサにゃ教えてねーけど、結構目新しいものもあると思うぜ」
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