魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「へー……なんていうか、神秘的ですねぇ」

 私たちとは文化や感性が異なる国がそこにはあるのだろう。たとえばお皿やコップひとつとっても、やや青味がかった、ガラスと陶器の中間のような透明感のある素材が使われていたり。色使いもこちらでは多色使いの豪華な色彩が好まれるのだが……単色で文字や味のある風景などが描かれたものが多く、見ていて味わい深さのようなものを感じてしまった。

 そんな新鮮な商品たちの中でも、ひとつのものに目を付けた私と、スレイバート様の声が偶然重なる。

「なあ、これ……」「あっ、テレサが喜びそう――」

 私たちは束の間顔を見合わせると、ふっと笑い合う。

「じゃあ、一緒に贈ってやるか」「そうですね」

 彼と私が手に取ったのは、ガラスケースに収められていたひとつの玉だ。でもってただの玉ではなく、どうも、複数の鮮やかな色の糸を絡めて表面を覆ったボールのようだ。値札には『手毬(テマリ)』という異国の文字が踊っていて、花や幾何学模様が表面にあしらわれ、くるくると回るたびに表情を変える。お店の人にこれはなんのための道具かと聞くと、遠い島国で童女が歌に合わせ地面に突いたりして遊ぶものらしいと聞くことができた。
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