魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「実際に住んでたって言うし、かなりのひねくれ者なんだろーな。なんだってひとつの部屋に扉が五つも六つも付いてんだよ……! おまけに床はあちこちわざと傾けて作られてるみてーだし、頭がおかしくなりそうだぜ」

 ――はては、ちょっとした賭博場なんてスリルあるものまで。

「…………? あのお店の人、さっきからこっちをすごく睨んで来ますけれど……何かあったんですか?」
「あー……とっくにほとぼりが冷めたと思ってたんだが、昔ちょっとな。イカサマディーラーに切れて建物をぶっ壊しちまったことがあって……」

 恋人同士というムードからはちょっと離れた無難さのない選択に、私はずっと目を見開いて、次になにが来るのかドキドキしっぱなしだった。

 きっと私ひとりではこんな所に来ることはなかっただろうし、よしんば挑戦してみたとしても、楽しみの入り口に辿り着く前に緊張で踵を返してしまったはず。信頼できる人が側にいるだけで、体験できることが……世界が何倍にも広がってゆくんだ!

「あ、すみません。私ばっかりはしゃいでしまって……」

 ふと隣を向くと、彼がこちらの表情を興味深そうな視線で見つめていて。
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