魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「悪いな。前に相談してた指輪の件で、ちょっとふたりで石を選ばせて欲しいんだ。いい品は入ってるか?」
「承知いたしました。ではどうぞ、こちらにおいでください」

 無駄のないやり取りの後、私たちは速やかに、奥の得意客用の応接スペースに案内される。

(わあ……綺麗。自然からの贈り物だっていうのが信じられないくらい……)

 そこでは、まだ値札すら付いていない燦然と輝く裸石が、いくつもクッションの上に並べられていた。
 店員さんが、「では、いつでもお声がけください」と離れた位置に移動すると、スレイバート様はソファに私を座らせ、肩を抱いてショーケースの中を覗き込む。

「ここ、ずっと昔から公爵家の装飾品を手掛けてくれてる老舗なんだ。さあ選ぼうぜ、指輪に付ける石」

 てっきり既製品の中から買い求めるのだと思っていた私は、そこで急に不安になってきた。だって、どう見てもそれぞれがお城の所蔵品と同じような見事なサイズで、私にはとても縁遠いものに感じられたから。

「わ、私あんまり目利きはできないんですが……」
「いいんだよ、感覚で。金のかかった石なんざ城にいくらでもあるだろ。今日選ぶのは、お前のためものなんだ」
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