魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 確かに……一番に考えるべきは私たちの婚約指輪だということなのだから、価値のあるなしは置いておいてもいいのかも。とはいえわざわざ公爵様に紹介するくらいだから、これらはいずれも超一級品の品々に間違いないのだけど。

 爪の一枚ほどもありそうな大粒のダイヤに、燃え盛る業火のように明るいルビー、深海の奥に臨むかのような深い色合いのサファイアに、瑞々しい森の恵みを体現したかのようなエメラルド。他にもトパーズやパール、変わり種ではトルマリンやオパールといったものまで……ありとあらゆる種類の特級の宝石が天井の明かりを吸い込み、きらきらと自らの美しさを主張し合う。

「ほら……こうやって具体的に身に着けてるとこを想像すんだとさ」

 触れている側の腕を持ち上げるようにして、彼が私の手をケースの上にかざした。すると心臓がばくばくとうるさく脈打ち、掴まれた手の方にばかり意識が行ってしまう。

 普段はいくら考えても、特別な感情など湧き上がって来ないのに……こういうシーンになると反応してしまうだから、なんだか不純な自分がひどく後ろめたい。

 でもこんなこと一生に何度もあることじゃない。今日は楽しむ――そう決めてきたのなら……恥ずかしさではなく、宝石の魅力の方に目を向けるべきだ。
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