魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 それはやや大きな縦長のアメジストだ。なんと、右半分が紫、左半分が黒に別れたバイカラーといわれるもの。境目はグラデーションするように変化しており、二色の源が同じところから生まれたことを物語っている。自分でも身に着けたいと思うほど、一目で気に入った。

「じゃあ、お前の付ける方はそいつに決定な。さ、後は俺の分を選んでくれよ……なんでもいいぜ」
(あ…………)

 その態度と優しい視線から、彼は私の気持ちを察してくれたのだと分かった。今日も私が色々なものを選ぶところを注意深く観察していたし、なにより、いつも肝心なところで大事なものを他人に譲ってしまおうとする、そういう人だから。だから私は――。

「ま、シンプルにダイヤでも、派手なトパーズとかでもなんでもいいぜ。お前が選んだものなら、大事にするし――」
「待って!」
「あん?」

 そこで黙ってはいられず、私は不思議そうな顔をした彼の瞳を、身を乗り出して見つめた。

「これ、ふたつに分けられないでしょうか?」
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