魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 この人と同じ時を一緒に生きられる幸せを、忘れないようにしたい。だから……ひとつのもとから生まれた同じものを――身に着けていたい。

「ダメ、でしょうか?」

 迷惑だとか恥だとかがどこかへ消え去って、気が付けば私は必死に彼の手を握り、目線で訴えていた。

「……ずりーよ」
「ご……ごめんなさい、無理ならいいんです!」

 彼の唇からぼそりとそんな言葉が漏れ、慌てて前言を撤回しようとした私の手を掴み返す。

「無理じゃねー。ってか、断れるわけねーだろ。確かに、価値も希少性も大事だろうが……。そうだな、俺たちにとっちゃ、こうしてお互いが相手のことを想っていられること。その方が、ずっと大事だもんな」

 スレイバート様は私の手をしげしげと眺めると、すぐに席を立ち、脇に控えていた店員に何事かを耳打ちした。すると速やかに石はどこかへと運ばれてゆき、笑顔のスレイバート様がこう伝えてくれた。
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