魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 そんな私の自分勝手さに嫌な顔ひとつせず、彼はしっかりと身体を包み込んでくれる。

 壁一枚隔てた場所に他の人もいるだろうに、人目も(はばか)らず誰かに甘えてしまうなんて。
 こんなこと、幼い頃だってしなかった。

 ――こうして、触れ合えば触れ合うだけ愛しくなって、その分離れた時の寂しさも倍になる矛盾。同時に抱えた、際限なく高まる幸福と、いつかこの時間が終わることへの怖れ。

 その心の名が、きっと――。
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