魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「ったく、あいつは……。お前といるとどんどん肩の力が抜けてくなぁ」
「気を付けるように言った方がいいんでしょうか」
「いや……公式の場でやらかさなきゃ別にいいだろ。以前は気を張りすぎていたきらいもあったしな」

 妹には特別甘いスレイバート様だが……確かに彼の言うように以前からテレサは、ひとりで病床の兄の面倒を見たり、大勢の領地の人を気に掛けたりと、少し気負い過ぎていたように思う。まだなんといっても十六やそこらの少女なのだし、家のことがなかったらもっと自分を優先できていたはず。もし、そんな張り詰めすぎた彼女にとって私の出現が息抜き要素になったのなら、幸いだったといえるだろう。

「そろそろ、あいつの将来のことも考えてやらなきゃいけねーんだがなぁ……」

 スレイバート様は難しい顔でぼやいている。この国では貴族ならば、成人する前には誰かと婚約を結んでいるのが普通だ。事実、希少な魔力を持つ彼女のもとには毎年下手をすれば百を超えるほどの縁談が舞い込んでくるが、すべてクラウスさんがシャットアウトし、彼女はこれまでに誰とも顔合わせすらしたことがないらしい。

 それにはそこはかとなく、呪いを受けて倒れたスレイバート様に気兼ねしていた事情もあったではと感じる。兄が幸せになるまでは、自分ひとりが誰かと結ばれるわけにはいかない、というような。
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