魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「そうなんです! お兄ちゃんは、とっても強くて優しくて、私の自慢なんです! 聖女様なら、絶対に分かってくれると思ってました……!」

 最近定着してきた聖女呼びだが、まだまだ私にとっては荷が重い。

「聖女だなんて恥ずかしいし……シルウィーって呼んでもらえないかな?」

 もっと気軽に接して欲しい――瞳に込めたそんな意思に、彼女は一旦言葉を止めるとはにかんだ様子で視線を彷徨わせた。

「えへへ……嬉しいです。そ、それじゃシルウィーさん、図々しいかもしれませんけど……ひとつだけ、お願いをしてみてもいいでしょうか」
「なあに? こうやってお祝いに駆け付けてくれたんだし、私にできることならなんでも」

 恥じらうような彼女の仕草に庇護欲を感じ、私が手を握ったままじっと言葉を待っていると、カヤさんが意を決して口を開く。

「えと、その……。実は私、シルウィーさんと、お友達になりたくて――」
「あ――――っ!」

 そんなささやかな願いは、後ろからのけたたましい悲鳴によって搔き消されてしまった。
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