魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 それから同時に相手を睨んで一言。

「「俺(オレ)とてめー(あんた)は一生合わねえけどな」」

 ちっと舌打ちを重ねて、どちらもそっぽを向いてしまった。リュドベルク領滞在時を思わせる険悪さに私は一気に血の気が引く。
目の前では、まるで子猫みたいにふたりの少女が威嚇し合い、後ろではその兄たちが大人げない雰囲気で互いを牽制する。もはや、この場を治めるには全魔力を吸い取って皆を昏倒させるしかないか……?

 そんなことを考えていた最中――

「あのう、皆様方……そろそろ祝賀会の始まるお時間ですが……」

 折り悪しも、万民に平等たる時間の神は波乱の空気を読んではくれず、本日の肝となる行事開始のお知らせがさらなる混乱を呼び込むことに。

(おめでたい席なのに、なんでこんなことになっちゃってるの!? えっ、ええっ――!?)
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