魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
4.輪を繋いで -harmony-
よもや一触即発の空気のまま、生誕祝賀会へと雪崩れ込むことになるかと危惧したけれど、さすがにそれは免除された。先程にあんな諍いがあった素振りは欠片も見せず、今テレサは、笑顔で壇上にて訪れてくれた招待客への挨拶をこなしている。
魔法の光を隅々まで行き渡らせる巨大な魔道シャンデリアの元、彼女の透き通った声が優しく聴衆へと響き渡った。
「――永らく私達ボースウィン領の民は、苦境を耐え忍ぶことしかできませんでした。父アルフリードの死去に始まり、兄も床に臥し……北の地は魔物の跋扈する魔境へと成り果てて、領民達も故郷から安全な地へと移らざるを得なくなってしまった。そんな危機を前に、私たちは微力を尽くし、救いを待つことしかできなかった……」
彼女は、ロンググローブに包まれた手を胸に当て、哀悼するように瞼を伏せる。その痛ましさに、招待客たちもそれぞれが辛い記憶を思い出したのか倣うと、しばし場は、厳かな静寂へと包まれる。
だが、それを打ち破るようにぱちりと目を開けたテレサは、凛とした声で聴衆に呼びかけてみせた。
「ですが、我らはそんな苦境に打ち勝つことができたのです! ここにいる方たちのみに留まらず、ボースウィン領に住むひとりひとりの領民が耐え忍び、力を振り絞ることでやっと待ち望んでいた夜明けは訪れました! これから大いにボースウィン領は発展し、失われた時を取り戻すでしょう! この素晴らしい時を、皆様と共有できること。そして、新たにまたひとつ年を重ねられることが、私はとても嬉しい……! 本日は、私だけでなくすべてのボースウィンの民がひとつ新たな歩みを踏み出せた一日として、喜びを皆で分かち合いましょう!」
魔法の光を隅々まで行き渡らせる巨大な魔道シャンデリアの元、彼女の透き通った声が優しく聴衆へと響き渡った。
「――永らく私達ボースウィン領の民は、苦境を耐え忍ぶことしかできませんでした。父アルフリードの死去に始まり、兄も床に臥し……北の地は魔物の跋扈する魔境へと成り果てて、領民達も故郷から安全な地へと移らざるを得なくなってしまった。そんな危機を前に、私たちは微力を尽くし、救いを待つことしかできなかった……」
彼女は、ロンググローブに包まれた手を胸に当て、哀悼するように瞼を伏せる。その痛ましさに、招待客たちもそれぞれが辛い記憶を思い出したのか倣うと、しばし場は、厳かな静寂へと包まれる。
だが、それを打ち破るようにぱちりと目を開けたテレサは、凛とした声で聴衆に呼びかけてみせた。
「ですが、我らはそんな苦境に打ち勝つことができたのです! ここにいる方たちのみに留まらず、ボースウィン領に住むひとりひとりの領民が耐え忍び、力を振り絞ることでやっと待ち望んでいた夜明けは訪れました! これから大いにボースウィン領は発展し、失われた時を取り戻すでしょう! この素晴らしい時を、皆様と共有できること。そして、新たにまたひとつ年を重ねられることが、私はとても嬉しい……! 本日は、私だけでなくすべてのボースウィンの民がひとつ新たな歩みを踏み出せた一日として、喜びを皆で分かち合いましょう!」