魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 それに応えるように、広間を大歓声が埋め尽くす。その人気ぶりを見れば、ボースウィン家の今後の安泰も間違いなきことだと思えた。

 その後スレイバート様や来賓としてラルフさんのスピーチなどもあり、今後両領地が協力体制を取っていくことなども発表されたりして……。

 私も恥ずかしながら、短い言葉で当領地に受け入れてもらったことに対するお礼と、これからもテレサを支え、領地の発展に尽くしたい――という旨を述べさせていただいたところで、スレイバート様が乾杯の音頭を取り、パーティーが始まった。

 そこからはテレサのために設置されたお誕生日席の元に招待客が列をなし、それぞれが趣向をこらして用意したプレゼントを手渡していく。傍らに控え、その様子をスレイバート様と一緒に眺めながら、私は誕生日とはこういうものなんだな……と把握していた。

「そういや、お前は初めてなんだっけ? 誕生日って」
「は、はい。実家にいた頃はずっと屋敷に籠りきりで、毎日同じ日々の繰り返しでしたから」

 当家では、私はおろか父の生誕や新年の祝いすらなく……王都で盛大に開かれる皇太子様の生誕記念パレードにすら足を運んだことがないと言えば、私がどれだけ没交渉な生活を送ってきたか想像がつくと思う。父は私がぼろが出すことを恐れ、可能な限り人目に触れさせまいとしていたから、長らく私にとって屋敷の外自体がほとんど別世界のようなものだったのだ。
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