魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 その時には、私も胸を張ってプレゼントを受け取れるような自分になっていたい――テレサの姿を見てそう感じていると、人混みを縫うようにしてリュドベルク家の兄妹が近づいて来た。

「おーいたいた。なあ、テレサ嬢のところに祝いの口上だけでも述べに行きたくてさ。一緒に来てくれよ。オレもう、珍しい料理が食いたくてハラペコでさあ」

 さすがに、主催者に挨拶もなしに食事にありつくのはためらわれたか、お腹に手を置いたラルフさんがひもじそうな顔で口角を下げてみせた。彼も育ちが市井だからか、いい意味で人に気を遣わせないというか、気取らないところは開けっぴろげで見ていて安心できる。
 そんな彼だからか、スレイバート様も遠慮なく挑発した。

「なんだ? でかい図体で怖気づいたかよ、その無駄な筋肉は飾りか、赤髪」

 筋肉質で立派な体型だから、礼装のサイズがいまいち合っておらず、やや窮屈そうなラルフさんがそこを弄られ語気を荒くした。

「うっせえ! オレが構わなくても、さっきみたいに妹が喧嘩して雰囲気が悪くなったら困んだろうが! 客として当然の配慮だ!」
「へっ、見た目の割に気の小せーことで」
「そっちこそひょろ長のっぽのくせしやがって……魔法じゃ敵わねーが、素手でならいくらでも勝負してやんぞ? おお?」
「スレイバート様、そのくらいで」「ちょっとお兄ちゃん! やめてよみっともない……」
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