魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~

6.まっすぐな人 -honesty-

「――なるほどな。あんたに隠れて、あいつどこの誰かも知れねー女に会いに行っちまったってわけか」

 空が、目に染みるほど青い……。

 屋外のベンチシートに両手を付き、足をぶらぶらとさせながら、隣に座るラルフさんが言った。私は、顔を深く俯け黙ってうなずく。

 結局あの後、彼は私の頭に自分のジャケットを被せ、目立たないようにしていつも知り合い以外出入りしないあの小庭園へと連れて行ってくれた。
 結婚前の女が泣きながら他の男と歩いているのを見られたら都合が悪いからと、配慮してくれたのだろう。

「ま、心配する気持ちはわかるし……あんたが、そういう手紙を見たってのは事実なんだろう。でも、オレにはあいつがそこまでのバカヤローだとは思えねえんだけどなぁ」
「…………」

 私だってそうだ。スレイバート様が私に言ってくれたことや行動を否定したくなんてない。でも、どうしてもあの……ともすれば恋人同士のやりとりに思えるような手紙の内容が気になってしまって、胸を強く締め付けてくる。
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