魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 表情を硬くしたまま変えない私を見て、ラルフさんは茶化すように言った。

「あいつも男だしなぁ……。あるとしたら、昔の彼女から手紙が着ちまったんで、久しぶりに会ってたことの頃を思い出して、つい旧交を温めに行っちまってたりしてな! 今回が最後だっつーことにして……って、わああっと、嘘嘘、冗談だってば! 泣くな!」

 また涙がじわっと浮かび出した私を慌ててとりなし、ポケットから取り出したハンカチを渡そうとパタパタ両手を動かすラルフさん。彼は、こちらが落ち着いた後、ぽつりと言った。

「へへ……こいつぁは元々勝負になんなかったな」
「…………はい?」

 意味が分からず、きょとんとした顔で私が見上げると、彼は羨ましそうに口元を緩める。

「んや、何でもねー。あんたも、本当にあいつのことが好きなんだなって思ってさ」
「――――そっ!?」

 私は感情的になりすぎて血が降りてこない顔をいっそう赤くしながら、首を左右に振ろうとして――止めた。そしておずおずと尋ねてみる。
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