魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 どうしてなのだろう……。

 ここにくるまではずっと、心を閉ざしてきた。なにがあっても自分の奥底に押し込めて、表情も消して、なにも感じないよう感情を凍らせてきたじゃないか。

 昔はできていたこと……でも、今はそれもできなくなってしまった。
 いつの間に、変わってしまったんだろう。周りの皆が優しくしてくれるから、私はすっかり、我がままになってしまったのか。

 ただ恥ずかしかった。前の方がずっと大人だった気がしてくる。いやいやをするように私が膝に顔を埋めて蹲っていると……隣からラルフさんがおずおずと声を掛けた。

「なあ……あのさ」
「…………、はい」
「その、実はさ…………オレ」

 いつになく、柔らかく語り掛けるような声音に、私はゆっくりと顔を上げ、彼の方を見た。
 するとラルフさんは恥ずかしそうな顔で頬をポリポリと掻いて、一旦瞳を逸らし蒼穹へと逃がした後、こちらを真っ直ぐに向いて、言った。
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