魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
7.静かな恐れ -fears-
王都の北部に位置する、精霊教会の大神殿。
シルウィー達が新たな土地へ旅立とうとしているその頃、そこでは少々困った騒ぎが起きていた。
それを苦慮するように厳めしい表情を浮かべたひとりの年かさの女性が、人が出払っていて人気のない廊下をひたひたと歩いていく。
「し、神殿長! ご相談が……」
「ええい、うるさい! 私は忙しいのです! 雑事など、あなたたちの手でなんとかなさい!」
相談をしようと駆け寄ってきた部下の話を聞きもせず跳ねのけると、彼女はひとつの扉の前まで進み、気の立った表情を隠すように深呼吸した。そしてごくりと唾を呑み込んだ後、張り付いたような笑みを浮かべて扉を叩く。
「巫女様、失礼いたします。入室をお許しいただけますでしょうか。いくつかご相談がありまして」
「――入りなさい」
内側からした若い女性の声に、神殿長は一層気持ちを引き締めると、ゆっくりと扉を開け……そして、ベッドにしどけなく横たわるひとりの女性の前に跪く。
シルウィー達が新たな土地へ旅立とうとしているその頃、そこでは少々困った騒ぎが起きていた。
それを苦慮するように厳めしい表情を浮かべたひとりの年かさの女性が、人が出払っていて人気のない廊下をひたひたと歩いていく。
「し、神殿長! ご相談が……」
「ええい、うるさい! 私は忙しいのです! 雑事など、あなたたちの手でなんとかなさい!」
相談をしようと駆け寄ってきた部下の話を聞きもせず跳ねのけると、彼女はひとつの扉の前まで進み、気の立った表情を隠すように深呼吸した。そしてごくりと唾を呑み込んだ後、張り付いたような笑みを浮かべて扉を叩く。
「巫女様、失礼いたします。入室をお許しいただけますでしょうか。いくつかご相談がありまして」
「――入りなさい」
内側からした若い女性の声に、神殿長は一層気持ちを引き締めると、ゆっくりと扉を開け……そして、ベッドにしどけなく横たわるひとりの女性の前に跪く。